工業用クロムめっきProducts

工業用クロムめっきの概要

ワークの形状により長いめっき槽、深いめっき槽等を使い分けている。また、バフ研磨は社内で行い、フレキシブル、自動研磨機、半自動研磨機を使うこともある。またその難易度、量によって協力企業を使い分けている。

■加工例 …各種ロール、ガイド、機械部品、金型
■めっき厚さ…数μmから厚付けでは 100~1000μm
■表面粗さ…バフ研磨、円筒研削により表面を調整する

特性

硬度

JIS(H8615)ではビッカース硬さ750以上となっているが用途によっては受渡当事者間の協定によってよいことになっている。
硬さの測定方法はJIS(Z2244)に記されているが、原理は次のようなものである。
四角錐形の圧子を試験片に一定の力で押し付け、どれだけ押し込まれるかを測定して硬度とする。実際には圧子が押し込まれた際に出来る圧痕の大きさを測定することによって行う。
硬度の要因はめっき液組成、添加剤の種類、めっき条件(温度、陰極電流密度)によって様々に変化する。

硬度換算表(資料により違いがあります。参考としてお使い下さい)

ロックウェルC
150kgf
68 67 66 65 64
ビッカース
50kgf
940 900 865 832 800
ショア反発
硬さ
- 95.2 93.1 91.0 88.9
ブリネル
硬さ
- - - (739) (722)
ロックウェルA
60kgf
85.6 85.0 84.5 83.9 83.4
ロックウェルD
100kgf
76.9 76.1 75.4 74.5 73.8

(山本科学工具研究社より)

当社では、実際にめっきした製品では測定出来ないので(破壊検査だから)製品と同時にサンプルをめっきし、そのサンプルの硬度を目安としています。
条件をきちんと管理すれば異常な値を示すことはなく、当社の従来の測定ではすべてHv900以上でした

測定
近くにある墨田区の施設にあるマイクロビッカース硬度計( 松沢精機製DMH-2)をお借りして測定する
ここは常駐の技術相談員の指導のもとに機器を使って自分で測定できる制度になっている

墨田区施設での測定風景

離型性

すべり性、型離れとも言う
クロムめっきは他のものが付着しにくい性質をもつので離型性がよくなる
プラスチックの成型金型等に多用されている
仕上げはバフ研磨が行われ、光沢が出る
バフ研磨で仕上げるとその光沢が成型製品にも反映される

耐摩耗性

耐摩耗性試験はJIS(H8502)にいくつかの方法が記されている。
その内、往復運動摩耗試験は試験片と研磨紙を貼り付けた摩擦輪との間に接触荷重を加えて往復運動摩擦を行い、その前後での質量の減量を測る。

硬度との関係
硬い方が耐摩耗性は良い場合が多いが、条件によってはそうとは限らない場合もあり、用途によって適度な硬さがあると考えられている。具体的な測定例は下図参照のこと。
つまり、しゅう動する相手との兼ね合いもあるので注意を必要とする。
青銅、黄銅、クロムめっきとはかじり現象を起し、摩耗が早まってしまう

工業用クロムめっき自身は摩耗が少ないが、精密に加工することにより相手も摩耗しにくくなる

測定
東京都鍍金工業組合環境科学研究所に近くにある摩耗試験機をお借りして測定する

  

仕上寸法

機械部品には機能上公差の付いた寸法指定がある
その部分にめっきを付ける時は次の方法で指定寸法の公差内に入るようにめっきを付ける

■めっきだけで指定寸法に入れる
めっき厚とのかね合いもあるが、ジグの工夫、マスキング方法とマスキング材料の工夫、めっき条件の工夫を組み合わせて指定公差内に入れていく
ロット数が少なかったり、形状が複雑な場合は難しいがロット数が多くなってくると可能になってくる
めっき後の機械加工(研削)によって寸法に入れるよりはコストダウンにつながる
この辺の技術、技能は経験が必要となってくるが、当社ではベテラン社員の技能が高く評価されている。
■研削により入れる

めっき厚を指定寸法より余分につけ、円筒研削、平面研削によって指定寸法まで削り落とす方法
めっきも余分に付けなければならず、研削も必要となるためコスト的にはアップする

■加工図面を見ると
めっき加工前寸法が A±0.01、めっき加工後の仕上寸法が A+めっき厚±0.01という図面が良く見うけられる。
めっきの場合はめっき厚と仕上寸法が指定される場合が多いので、この指定方法ではめっきのバラツキが許されなくなってしまう。特に最近はNC等の普及により加工のバラツキが減ってきており、めっき前の寸法がプラス側いっぱいになっているとめっき厚のバラツキがゼロでないと図面通りには仕上がらない。

めっき厚

■測定方法
様々な方法があり、それぞれ長所短所があるがその代表的主なものは次の通り(JIS H8501)

・蛍光X線式試験方法
物質にX線を当てるとその物質固有の蛍光X線が放射される原理を利用する
非破壊試験で短時間に測定できるが、資料の大きさに限度がある

・磁力式試験方法
磁性体素地上の非磁性皮膜の膜厚を測定することが出来る
具体的には鉄素地上の銅、クロムめっきの厚みを測定出来る
素地とめっき金属に制限があるが非破壊試験であり、現場向けである

・電解式試験方法
めっき皮膜を電流を流して溶かし、それに要した電気量を測定してめっき厚を求める破壊式であるが、様々なめっき皮膜に対応 出来る

・顕微鏡断面試験方法
試料を切断し、断面を精密に研磨して顕微鏡観察により膜厚を直接測定する破壊式であり、非常に手間はかかるがどんなめっき にも対応出来る

■バラツキのイメージと改善策

・角にはめっきが多くつく
・へこんだ所にはめっきが薄くなる
・角はC面よりR面の方がなめらかにつく

・補助電極を入れるとめっき厚のバラツキを補正できる
・めっき厚が薄くなるところには補助陽極を入れる
・めっき厚が厚くなるところには補助陰極を入れる

◎補助電極の工夫とその他の工夫により3mの被めっき物でもめっき厚のバラツキを10%以内に収めることが出来る
(当社の実績)

 

テストピース(板)に硬質クロムめっきをした時の厚さ分布
(株)ハイテクノ提供

 

墨田区施設での蛍光X線での膜厚測定風景

マスキング

仕様によってはめっきをつけてはいけない部分が指定されることがある
(例 ) すでに仕上寸法になっている、表面にめっき金属があっていはいけない等

その場合はその部分を次の方法で覆ってめっきが付かない様にする

・特殊塗料を塗る
・ビニールテープを巻く
・金属テープ(アルミ、鉛)を巻く
・ジグを使って覆う

設備

当社では容量が150㍑から6000㍑まで、深さ 1.1m~2.2m、長さ1m~4.5mのめっき槽を用意している
被めっき物の大きさ、めっき仕様、素材の材質によってどのめっき槽を使うかを決定する